書誌情報:桜井基晴『編入数学徹底研究 頻出問題と過去問題の演習』(金子書房、2020年)
『編入数学徹底研究』p.11 第1章 章末問題 大問1 の自作解説です。自作解説については、書籍付属の解答の中で、私が内容が難しいと感じた箇所の補足説明(途中式の補足、具体例の記載等)、別解の掲載等が主となります。
誤った内容の解説にならないよう細心の注意を払っていますが、もし間違いや不明な点を発見された場合は、コメントで教えていただけると幸いです。
(1)(小問1)
与式が成立することを示す問題です。これは、与えられているyの式を1回微分、2回微分し、与式に代入して(左辺)=(右辺)を示すことで解くことができます。
特に難しい点はないので、詳細な解説は省略します。逆三角関数の微分と合成微分が出てくるので、計算ミスに注意しましょう。
(2)(小問2)
nが1以上の整数のとき、x=0が代入されたyのn次導関数(y^(n)(0))を求める問題です。
例題1-1の方法で解いてみる
「n次導関数を求める」ということなので、解法として、編入数学徹底研究(以下『徹底研究』)p.4 例題1-1のように、yを数回微分しそこから規則性を見つける方法をまず思いつくと思います。一度それで解けないか試してみます。
(1)で求めたy’とy”を並べてみると、

のようになります。上の画像にも書いてある通り、
- 積 or 商の微分を繰り返し行わないといけない & その回数は微分回数を増やすごとに増えていく
- 式の形が複雑で、規則性を見つけるのが難しい
ということが分かります。この後yを3回微分した式を求めて、規則性を見つけていくのは大変なので、この方法だと厳しそうです。
2階線形微分方程式の両辺をn回微分し、関係式を求める
では、どのように解いたら良いのでしょうか?結論から言うと、2階線形微分方程式の両辺をn回微分することで関係式を求めて、そこから規則性を見つける方法です。
ここから、行ごとに式や文言がどのような意味を持つか、内容が難しい箇所を中心に解説していきます。書籍付属の解答(p.205 第1章 章末問題 解答 大問1 (2))を見ながら読むことを推奨します。
1~3行目(2階線形微分方程式の両辺をn回微分)

解答の1行目に書いてある微分方程式は、(1)の問題文で出てきたものです。またこの方程式は、
- yの2回微分まで出てきている(2階)
- それぞれ0回、1回、2回微分されたyが足し合わさっている(線形微分方程式)
ことから、2階線形微分方程式となっています。この方程式の両辺をn回微分していきます(a)。
また、導関数の性質により、3行目で左辺を各項でn回微分する形に変形しています(b)。
4~9行目(p.205), 10~12行目(p.206)(ライプニッツの公式を利用し各項をn回微分する)
4行目からページをまたいで12行目までは、各項のn回微分の計算をしています。
4行目の文言で出てきている通り、ライプニッツの公式を使うと計算を楽にすることができます。

3行目で求めたn回微分の式の左辺に注目して下さい。第1項と第2項のn回微分の中身を見ると、両方ともxの関数の積になっていることが分かります。徹底研究 p.5 例題1-2 でも出てきた通り、関数の積をn回微分するときは、ライプニッツの公式を用いて多項式の形にする方法が使えました。今回はそれを利用します。

5~10行目は、第1項のn回微分の計算です。1-x^2の微分回数を0回、1回、2回、…という風に、1ずつ増やしていきますが、ここで微分回数が3(r=3)になったときに注目して下さい。
1-x^2は2次式なので、3回以上微分したら値は0になります。つまり、微分回数が3以上(r≧3)の項には0がかかるので、考えなくて良いということになります。なので、10行目のように、最終的にはr=0, 1, 2の3つの項が足し合わさった式が出てきます。

11~12行目は、第2項のn回微分の計算です。これも第1項と同様に、xは1次式で、2回以上微分したら0になるので、微分回数が2以上(r≧2)の項を無視しています。

13~24行目(両辺をn回微分した微分方程式にx=0を代入し、関係式を得る)
13~21行目では、4~12行目でn回微分した各項を、両辺をn回微分した元の微分方程式に代入していきます。式が少し長いので、計算ミスに注意しましょう(a)。
22~24行目では、その式にx=0を代入し、yの(n+2)回微分とyのn回微分の関係式を得ています。y^(n)(0)にn^2-a^2をかけると、y^(n+2)(0)に等しくなるという関係を表す式です(b)。

ここで、1~3行目のときに出てきた、2階線形微分方程式の両辺をn回微分する理由が分かります。
今回の2階線形微分方程式には、次の特徴があります。
- 微分方程式の各項が、xの関数の積になっている
→ ライプニッツの公式を用いて、両辺のn回微分ができる - 一方の関数の次数が少ない
→ 公式を適用した際に、項の数が2~3個
→ yを実際に微分する必要がなく、y^(n)(yのn次導関数)という形で書けるので、計算が楽

また、22~24行目で得た関係式は、式の形が例題1-1の方法で試したときのものよりもはるかに単純です。なので、nの具体例を考えることで、規則性を見つけることができます。

つまり、以下の2つがこのような解法をとる理由となります。
- 「各項がxの関数の積である」「一方の関数の次数が少ない」という、今回の2階線形微分方程式の特徴を活かし、ライプニッツの公式を用いて両辺をn回微分することで、計算を簡素かつ楽なものにすることができるから
- 2階線形微分方程式の両辺をn回微分して得られる関係式は、yを1, 2, 3, … 回微分した式よりも単純になり、規則性を見つけやすいから
25~31行目(nが奇数か偶数かで場合分けを行い、それぞれの場合でのx=0のときのyのn次導関数を求める)
24行目で得た関係式を基に、y^(n)(0)を求めていきます。
解答ではいきなり25~26行目で、n=0とn=1のときの値の違いにより、場合分けを行っています。これはどういうことなのか、詳しく説明していきたいと思います。
まず、一旦、n=0, 2, …, 5までの式を並べてみます。n≧1なのにn=0の場合を考えても良いのかと疑問に思うかもしれませんが、n=0のときのn次導関数は、元々のyの関数と同じものを指すので、問題はないです。

(ⅰ)nが奇数のとき、(ⅱ)偶数のとき、で式を分けてみます。

(ⅰ)から見ていきます。n=3のとき、最後にy^(3)(0)が出てきています。この3次導関数は、n=1のときの左辺の式と同じです。同様に、n=5のときは、n=3のときの左辺の式であるy^(5)(0)が出てきます。

y^(3)(0)をn=1のときの式を用いて、y^(5)(0)をn=3, 1のときの式を用いて、それぞれ展開すると次のようになります。

n=1, 3, 5, …のいずれの場合でも、n=1のときの式を利用して展開できるので、式の最後にy'(0)がつきます。つまり、nが奇数のときのn次導関数は、全てx=0が代入されたyの1次導関数(すなわちy'(0))を用いて表される、ということが分かります。
(ⅱ)も見ていきます。(ⅰ)と同様に、n=2のとき、n=0のときの左辺の式であるy^(2)(0)が、n=4のとき、n=2のときの左辺の式であるy^(4)(0)が、それぞれ出てきます。

y^(2)(0)をn=0のときの式を用いて、y^(4)(0)をn=2, 0のときの式を用いて、それぞれ展開すると次のようになります。

n=(0, )2, 4, …のいずれの場合でも、n=0のときの式を利用して展開できるので、式の最後にy(0)がつきます。つまり、nが偶数のときのn次導関数は、全てx=0が代入されたyの0次導関数(すなわちy(0))を用いて表される、ということが分かります。
このように、
- (ⅰ) nが奇数
→ y'(0)を用いて表される - (ⅱ) nが偶数
→ y(0)を用いて表される
という違いがあるため、場合分けが必要になります。
なので、25~26行目で、n=0とn=1のときのy^(n)(0)を求め、nが奇数と偶数の場合でそれぞれ最終的に残る式の値を予め計算しているのです。
では、(ⅰ)と(ⅱ)それぞれの場合で、どのような式になるのか計算していきましょう。解答では(ⅱ) nが偶数のとき を先に書いていますが、どちらを先に書いても大丈夫なので、この記事では(ⅰ) nが奇数のとき から先に計算していきます。
まず、(ⅰ) nが奇数のとき です。n=1, 2, …であることに注意し、正の整数kを用いると、nが奇数というのはn=2k-1と表すことができます。n=1, 3, 5のそれぞれの場合を見て規則性を考えながら、n=2k-1を使って一般化した式を書いてみると、

のようになります。最後に残ったy'(0)の式を計算すると、y'(0)=aになるので、

という答えになります。
次に、(ⅱ) nが偶数のとき です。(ⅰ)と同様にkを用いて表すと、nが偶数というのはn=2kと表せます。同様に規則性を考え、n=2kを使って一般化した式を書いてみると、

のようになります。最後に残ったy(0)の式を計算すると、y(0)=0になるので、

という答えになります。
以上により、(2)の答えは

となります。
解説は以上となります。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント